内容がまったく違う、ふたつの遺言書

今日は、前回に続き、
わたしが知人の税理士から聞いた「故人さまが想われない相続」についてです。

前回のおさらいを少し。
Aさんは、故人さまから遺言で譲り受けた土地を売却使用としました。
すると、故人さまが生前入居していた施設の弁護士から、次のような手紙が届きました。

「その土地は施設に相続させる、という遺言があります。
したがって、その土地は施設のものであり、Aさんのものではありません。」

これだけ聞くと、
どちらかが嘘をついていると思われるでしょう。
しかし、どちらが言っていることも本当です。

遺言は、実際にふたつ、存在したのです。
ひとつは、「この土地をAさんに相続させる」というもの。

そして、その遺言を書いてから一ヶ月も経たない日付で、
もうひとつの遺言「この土地は、施設に相続させる」というものです。
いずれも、自筆証書といって、故人さまが自分の手で書いた遺言でした。

法律的には、日付が後の方の遺言が有効です。
もちろん、遺言が偽装されていた場合は別ですが。

とてもとても、不自然な話です。
故人さまの気持ちは、いったい、なにが本当だったのでしょう。
どちらかの遺言、もしくは、両方の遺言を、
故人さまが無理やり書かされたことなんてことは考えすぎでしょうか。

いま、Aさんと施設は、相手の遺言が無効だと主張しあっているようです。
故人さまの気持ちはどこへいってしまったのでしょう。
悲しくなってしまう話ですね。